まずいラーメンは食べたくない!

「新型コロナウィルス感染拡大防止」として行われた全国一斉休校は、学びの保障や子どもの居場所という『学校』の存在意義について考えさせてくれました。

ICT活用や環境格差の問題、高校生による9月入学署名活動などもありました。地域には子どもたちの登下校の姿が戻ってきて何よりですが、マスクと熱中症、夏休みの短縮などなど、課題は多そうです。

そこで、久しぶりに集まって開催する読書サロンのテーマを『学校』としました。自分自身が通っていた学校のこと、保護者からみた学校、今の自分にとっての学校などについて語り合いました。ご参加ありがとうございました。

 

2メートル離れて遊べ?

消しゴムを拾ってあげるのはダメ?

先生にもどうかと思うフェイスシールドを子どもにも?

「新たな生活様式」の学校は、先生と子どもたちに何をもたらすのだろう。

子どもの命を守るため、って本当にそうなんだろうか。

とても気になっていましたが、本の話をしているうちに、子どもは頼もしく乗り越えていくのかもしれないと思えてきました。

 

学校には、友だちがいて、先生がいて、本がある。

きっと、学校や地域や本の中に、信頼に値する大人との出会いがあるだろう。

もし、学校が不便だと思うなら「行かない」という選択肢もありだろう。

 

絵本作家:五味太郎さんも言っています。

『学校というタイプに向いている子と向いていない子、どっちでもいい子がいる』

『じょうぶな頭と、かしこい体をもとう』

 

「かしこい頭」は世の中に付き合いすぎてしまうし、「じょうぶな体」は働かされすぎてしまう。

 「じょうぶな頭」とは、自分で考える頭のこと。

「かしこい体」とは、敏感で時折ちゃんとさぼれる体のこと。

 

まずいラーメンは食べたくない!

タフなあたまと、感度の良いからだでいこう!

持ち寄られた本を紹介します。

 

いのちのおはなし 日野原重明/村上康成(講談社)

95歳の日野原重明先生が、10歳の子どもたちに語った授業が絵本になった。お互いの心音を聴診器で聞き合う子どもたち。「いのち」は「じかん」。時間を使うということは、「いのち」を使うということ。自分以外のもののために「こころ」と「じかん」を使う。

 

 

ぼくのかえりみち ひがしちから(BL出版)

「この白い線から落ちたら大変なことになる!」学校からの帰り道、白い線だけを通って家に帰ることを決意する男の子。いつもの横断歩道や曲がり角が、想像の中で大冒険の世界になる! きっと、思い当たる人が多いはず。無事に冒険を終えたラストシーンの表情が可愛い。

 

 

さらに・大人問題 五味太郎(講談社)

「大人たちよ、どこかおかしくはないか!?」 絵本作家による、子ども問題における「大人有罪論」。『学校がつまらないから行かないのは、「このラーメンはまずいから食べない」というのと同じです。つまらないから行かないのも、おもしろいから行くのも、等しくノーマルな現象です』

 

 

飛ぶ教室 エーリヒ・ケストナー(岩波少年文庫)

クリスマスのギムナジウム(ドイツの寄宿学校)を舞台に繰り広げられる物語。出版が制限され、人々の目の前で本が焼かれるナチス政権下にあって、児童文学という形で著者が残した言葉が今も響く。『かしこさをともなわない勇気は乱暴でしかないし、勇気をともなわないかしこさは屁のようなものなんだよ!世界の歴史のなかには、かしこくない人びとが勇気をもち、かしこい人びとが臆病だった時代がいくらもあった』『勇気ある人びとがかしこく、かしこい人びとが勇気をもつようになってはじめて、人類も進歩したなと実感されるのだろう』『ぼくらに必要なのは、教師っていう人間だ。歩くカンヅメじゃないんだ。ぼくらを成長させたいなら、自分も成長しないではいられない教師が必要なんだよ』

 

 

17歳の特別教室・人生のサバイバル力 佐藤優(講談社)

元外務省主任分析官で作家の佐藤氏が、母の出身地である沖縄県久米島の高校生に行った特別授業。1930年生まれの母は、沖縄戦を生き延びた経験をもつ。何のために勉強するのか。沖縄の歴史、沖縄の人々のサバイバルから何を学ぶのか。人生で壁に出会ったとき必要なのは、「総合知」だ。波乱万丈の半生を経て作家となった佐藤氏が、学校では教えてくれない本物の知恵を伝える白熱教室。

 

 

17歳の特別教室・答えより問いを探して 高橋源一郎(講談社)

あたり前を疑ってみよう。正式に文科省の認可を受けた学校なのに、学年がない、時間割がない、チャイムがない、試験がない、儀式がない、整列がない…。そんな「新しい学校」の高等部で行われた作家の特別授業をまとめた本。作家は言う。ぼくは子どもが生まれるまで「親」ではなかった、子どもがいるから「親」になった、子どもたちがぼくを「親」にしてくれたと。つまり、親がいて子どもがいるのではないと。「先生」と生徒も同じではないか。生徒がいるから、「先生」も存在できる。

 

 

泣きみそ校長と弁当の日 竹下和男/渡邊美穂(西日本新聞社)

 香川県にある小学校の校長先生が始めた「弁当の日」は、子どもが自分で作った弁当を持参するというもので、親は手伝わないというのがルール。『自分の存在価値が感じられない子どもたち』の心理的な空腹感を満たそうという試みから生まれた、涙と笑いのエピソードが紹介されている。

 

 

できる!を伸ばす弁当の日 親はけっして手伝わないで 竹下和男(共同通信社)

 何を作るのかを決めるのも、買い物も調理も片付けも、すべて子どもがやって、親は手伝わない。親も先生も、批評や評価をせず、見守る。子どもには、自分で伸びていこうとする力が備わっていることを思い出そう。じっと見守ることができるのが、大人の力。

 

 

エジソン こわせたまみ/福原ゆきお(チャイルド本社)

発明王エジソンの伝記絵本。学校に行き始めたエジソンは、「落ち着きがない」「迷惑だ」と言われてしまう。先生の態度に憤慨した母ナンシーは、学校に通わず自宅学習させる選択をする。母は、エジソンの疑問を一切否定せず、一緒に考え、本を与え、励まし、祈り、支え続けた。

 

 

これからの大学 松村圭一郎(春秋社)

『うしろめたさの人類学』の著者が贈る「学問のすすめ」。 学ぶとは? 学ぶことの喜びとは? 高等教育にできることとは? 学生のみならず、新しい視点で世界を見つめようとする人のための、異色の教育論。「ほぼ日の学校」の校長・河野道和氏との対談も収録されている。

 

 

いつものちこくのおとこのこ ジョン・バーニンガム/谷川俊太郎(あかね書房)

今日も学校に遅刻したジョン・ノーマン・パトリック・マクヘネシーは、「途中でワニにおそわれたんです」と先生に言いますが、「そんなことはありえん!」と叱られて罰を受けます。次の日も、その次の日も、遅刻した理由を信じてもらえず厳しく罰を受けるノーマン。ある日、先生にも大変なことが起きるのですが…。ちゃんと話を聞いてもらえず、信じてもらえず、不条理に罰せられても、まっすぐに前を向いて歩き続けるノーマン! 学び続けるために。

 

 

どろぼうがっこう かこさとし(偕成社)

まぬけな校長先生と生徒たちの、世にもおかしな「どろぼうがっこう」。世にも名高い「くまさかとらえもん」校長から出された宿題は、何か泥棒をしてくること。はたして生徒たちが泥棒してきたものとは…。先生も生徒も、見かけは恐そうだけどセリフが楽しくて愛嬌たっぷりで、子どもたちに愛され続けている絵本。

 

 

失敗図鑑 大野正人(文響社)

新たな挑戦には失敗がつきものだと言われるけれど、失敗を恐れて挑戦できないこともある。エジソンやノーベル、ベートーベンなど「すごい人」と言われている人たちのエピソードをとりあげて、実は「すごい人」にもいろいろあったんだよと教えてくれる本。

 

 

バンザイ!まちがいさがし金メダル 鈴木喜代春/稲本みえ子(旺文社)

くまたろう先生は、間違えた子に「よくまちがえたね」と言って金メダルをあげる。みんな、「まちがい金メダル」が欲しくてどんどん手をあげる。そして、なかなか手を上げられなかったゆかりさんも、ある日つられて手をあげる。学校へ行くのは何のため?先生がいるのは誰のため? まちがえる子=ダメな子ではないと、そう教えてくれる先生がいる学校。

 

 

アズブカ トルストイ(未知谷)

ロシア語「アズブカ」とは、日本語の「いろは」「ものごとの始め」のこと。文豪トルストイが44歳のときに完成させ、認定図書となった子どものための教科書『アズブカ』が、新訳で出版され、トルストイの玄孫ナターシャが挿絵を担当している。正しく生きることの教えを説く道徳的な話だが、ブラックで残酷でクールな面も。日本の教科書とは一味違う。

 

 

子どもと学校 河合隼雄(岩波文庫)

子どもの世界に長く関わってきた著者によって、約30年前に出版された本。遊びについて、性について、死について。教える側と教わる側、倫理と道徳、不登校の処方箋…。たとえば、体育の時間などに行われる「笛による統制」の考察などは、本当に深く示唆に富んでいて感銘する。『笛によって集団が統一的に行動したとしても、成員の各人がそれによって、自分にとっての「統制」ということを経験しているとは限らない』『笛は教師に対しても鳴っているものとして、教師自身が笛による一瞬の緊張や、「統制」の感じを自ら経験していなくてはならない。そのような教師の態度に支えられてこそ、生徒は受動的に「笛」に従う人ではなく、笛の機能を自らのなかに内在させてゆくことができるのでる』

 

 

こころの最終講義 河合隼雄(新潮文庫)

臨床心理学者・河合隼雄氏が行った、1992年の京都大学定年退職記念講義「コンステレーション」や、教育センターの市民講座などの講義を収めて文庫化した本。本を手に、ひとりの生徒になって、先生の語りに耳を傾ける。

 

写真投稿で参加したメンバーからの紹介本です。

●光と窓 カシワイ(リイド社)

著者自身が影響を受けた文学作品を静謐な線と漫画で描き出した。

 

●感動する!数学 桜井進(PHP文庫)

数学は美しい。数学が苦手な人にも読んでほしい、数学のロマンと感動を味わう本。

 

●みんながおしえてくれました 五味太郎(絵本館)

子どもは、誰から何を教えてもらうのが一番いいのかを知っている。素直に教えてもらって、素直に学ぶ。

 

●小さい白いにわとり/光村ライブラリー(光村図書出版)

小学校の国語教科書に掲載された作品を精選して集めたシリーズ。「小さい白いにわとり」は、ウクライナ民話の翻訳。

 

次回は、8月8日(土)19時~21時です。

本好きな人たちが、好きな本を持ち寄って語り合う会です。

ご参加お待ちしております。