自宅のハナミズキが満開になり、どうやらツバメの抱卵も始まったもよう。無事にヒナが誕生して、にぎやかになる日が待ち遠しいです。
前回の投稿に続き、「緊急対談~パンデミックが変える世界」の中で印象に残ったところを紹介します。
今日とりあげるのは、歴史学者ユヴァ・ノア・ハラミ氏の話です。 ⇒ NHK・ETV特集ホームページ
「パンデミックが変える世界」としてハラミ氏があげた事例は、身近でとてもわかりやすいものでした。
ハラミ氏の大学で過去20年間も検討しながら、様々な反対で変化を起こせなかったオンライン化。しかし今回は、1週間で全コースがオンラインに移行したそうです。
1週間で全コースというのはすごいですが、命を守るために《人との接触を断つ》という最も合理的な対策として、私の身近なところでもオンライン化が当たり前となりました。
私自身も、なんとなく二の足を踏んでいたビデオ会議というものにチャレンジしています。
急速に進んだオンライン化は危機が終わっても元の姿にもどることはなく、雇用においても大きな変化をもたらします。
地元の教授に高い給料を払うよりも、オンラインでつながった(遠くても安い)教授を雇う。
あるいは、労働者が組織的に存在するということがなくなるかもしれない。
派遣とかフリーランスとか、平成の時代に働き方は確かに変わってきていました・・・。
少しずつ起きていた変化が、今回のパンデミックで一気に加速するということなのでしょうか。
「危機が終わっても元の姿にもどらない」ということでは、民主主義の危機についても語っていました。
ウィルスによる生命の危機と経済の危機への対策として、今、政府による様々な重大な決定が行われています。
この新しい秩序が定着してパンデミックが終息したとき、「現在の決定を変えることは非常に難しい」と氏は言います。
●いま政治家は、経済、教育システム、国際関係のルールを根本的に書き換えるチャンスを握っている
●緊急対策は間違いなく必要だが、チェックアンドバランスが欠かせない
●政府、権力につながる人だけでなく、国民すべてを支援させるための監視が必要
●恐怖のあまり、「賢くて力のあるものに権力を掌握してもらい、全てを決めて面倒をみてくれればいい」という心理になるのは非常に危険
●強大な権力を手にしたものは、間違いを犯しても決して認めず隠ぺいし、間違いをさらに重ねて他の人に責任を転嫁する。そうやって、さらに強大な権力を手に入れていく
これって、パンデミック後の世界の話ではなく、この国の話・・・?
もうひとつの警告として、大規模な監視システムの導入があげられていました。
移動の監視(皮膚の外)から生体反応(内側)の監視へ。
一人ひとりの体温や血圧などの生体情報を監視するのは技術的に可能で、実行する意志も働いているので、今回のパンデミック終息後も感染者把握のために継続する可能性。
そして、政治家の演説を聞いている人や、テレビを観ている人の体内で起きている現象(生体情報)から、その感情的反応を知ることができ、監視できる。これはSFの話ではなく、いま現実の危機としてあるのだと言います。
これって、介護の世界で実際にやっていること・・・?
移動や活動の制限を緩め、レストランやビーチに行くのを許可するタイミングは、このような監視の導入につながるかもしれない・・・。
なんだかゾクッとしてしまう話ばかりですが。
ハラミ氏が人間の強みとして強調していたのは、「協力できること」でした。
一人の市民として慎重かつ合理的に判断し、選択し、行動すること。
経験したこと、知り得たことを共有し、グローバルに協力すること。
●十分な知識を持ち自分で判断できる国民は、警察に指示されるだけの国民よりはるかに効果的
●信ずるべき情報を慎重に吟味し、科学に基づいた情報を信頼すること
●科学的な裏付けのある指針を実行すること
●パンデミックへの現実的な対抗策は、隔絶ではなく協力と情報共有である
●これを「ウィルスとの戦争」とするのは間違った例えである。戦争というのは銃を持った兵士たちの殺し合いだ。病院で働きベッドのシーツを換える看護師こそ英雄
●重要なのは人のケアをすること。ウィルスはやっつけなくてはいけないが、いかなる人も敵とみなすべきではない
●世界中の全ての人をケアし、ウィルスの拡散から守り、経済的苦境からも守ることができたら、それが成功
対談の最後は、こんなふうに結ばれていました。
『今のような危機では、毎日少しでも自分の心をいたわることがとても大切』
『オープンな心で、状況を科学的理性的に見つめれば、きっと出口が見つかるはず』
戦争とか、勝利とか、撲滅とか、《敵》を作るキャンペーンは、自分にとって都合のよくない他人のことを敵視するような人を作ってしまう。
他の人を守ることが自分を守る、という合理的利己主義(=利他主義)に通ずる話だと思いました。
重要なのは、人のケアをすること。
それぞれの場所で、自分にできる方法で、大切な人のケアをしよう。
自分の心もふくめて。