第20回「本好きのための読書サロン」のテーマは《夢》。
人が眠っている間に見る《夢》については、心理学や脳科学などで研究されていますね。いろんな説があるようですが、「脳が情報整理をしている時に生じる”ノイズ”」という説明がわかりやすいです。なんだか夢のない話だけれど、そこに情動が関わっていることはわかっています。
どんな夢を見ているかは本人が語るしかないのだけれど、外からも見ることができるような時代が来るかも…?
『イメージの心理学』(河合隼雄)に、『現代人は、「信じる」ことよりも「知る」ことに重きをおこうとしている』とあります。「簡単にわかってしまわないほうがいいこともあるよね」素敵な本たちから、そんなメッセージを受け取りました。
持ち寄り本の紹介です。
●ドラえもん[未来・宇宙編] 藤子・F・不二雄/小学館コロコロ文庫
のび太が「スターウォーズ」「未知との遭遇」「銀河鉄道999」などを体験してしまうという夢のような話。便利な機械という存在を超えて、家族であり友だちであり、ペットでもあり老賢者でもある。22世紀には、自分だけのドラえもんが存在するのかな。
●陰陽師 岡野玲子/夢枕獏(原作)/白泉社
夢枕獏の原作小説を漫画化したもので全13巻。平安時代の都や貴族、鬼や魔物などを流麗なタッチで描く。最強の陰陽師:安倍晴明と笛の名手:源博雅の二人が、都でおきる奇怪な現象や事件を解決していく。原作は30年以上続くシリーズで、映画やドラマにもなった。ペンネームは、夢を食べるという伝説の「獏」と、夢のような物語を書きたいという意味だとか。
●こんとん 夢枕獏/松本大洋/偕成社
中国神話の四凶のひとつ《混沌》は、六本の脚に四枚の羽根を持ち、顔がなく、自分の尻尾をくわえて回っては空を仰いで笑う…。「南海の帝と北海の帝が、人間にあって《混沌》にはない7つの穴(目、耳、鼻、口)を1日ひとつずつ開けていくと、7日目に死んでしまった」という伝説が絵本となった。何もなさない存在、《意味》をなさない存在、『こんとん きみがすきだよ』
●マンガ中国の思想大全 蔡志忠/野末陳平/和田武司/講談社
孔子、孟子、老子、荘子など中国の思想書から、哲人たちの知恵の数々を選んでマンガでわかりやすく解説。『荘子』には、《混沌》の話が説かれている。「自然(混沌)に無理やり人間が手を加えること(7つの穴)で本来の自然の姿をなくしてしまう」「本当の自然の姿は、人には不可知だ」と説く。何もないことが《混沌》なのだ。
●空の飛びかた セバスティアン・メッセンモージャー/光村教育図書
散歩の途中で男が出会ったペンギンは、「空から落ちた」と言う。ペンギンが空を飛べるはずないのだけれど。「飛べる」と言い張るペンギンのために、いろんな実験やトレーニングをしてみた。…やっぱり飛べるわけがない。そんなある日、ペンギンの群れが飛んできて…。真剣に取り組む二人の姿が、やさしいタッチで描かれていて、なんだか温かい気持ちになる絵本。
●ぼくのふとんはうみでできている ミロコマチコ/あかね書房
ネコのシロと一緒に、海のふとんで寝る。シロは泳ぎが得意。シロのあとを小さな貝殻がついて行く。目が覚めたら、子ネコがたくさん生まれていたよ。ぼくのふとんはネコたちでできている…。ふかふかのネコや、ほかほかいい匂いの食パンが布団なら、楽しい夢を見るだろうなあ。楽しい夢から目覚めたら、きっと楽しい一日が待っている。
●ぼくのたび みやこしあきこ/ブロンズ新社
小さなホテルで働くぼくは、いつか、この小さな町を出ていく。大きなカバンを持って、扉を開けて、ここではないどこかへ。知らないところへ、行きたいほうへ。世界中で高く評価され、数々の賞を受けている実力派作家が描くリトグラフが美しい。ホテルで働く日常はモノクロで、夢の中で旅するシーンはカラーで、知らないところへ旅したくなる絵本。
●ゆめみるどうぶつたち イザベル・シムレール/石津ちひろ/岩波書店
森で、海で、空で、草原で、木の上で、気持ちよさそうに眠る動物たちの姿や表情が、繊細に鮮やかに描かれる。動物たちの羽毛一本一本、月明かりの夜の空気や、草木の匂い。いい夢を見てるに違いない表情。この地球のすべての生き物が、こんなふうに眠っていてほしいと祈りたくなる。
●マシューのゆめ~えかきになったねずみのはなし~ レオ⁼レオニ/谷川俊太郎/好学社
貧しい家に生まれたネズミのマシューは、両親から医者になるようにと期待されている。ある日、美術館に行って絵画を見たマシューは、ものの見方ということに気づく。そして、みすぼらしく感じていた屋根裏の家にも、光輝く美しさを見つけ出す。絵描きになることを決めたマシューは…。
●ピーターパンとウェンディ ジェームズ・M・バリー/新潮文庫
誰もが知っている「ピーターパン」の原作。ネバーランドの冒険物語には、実は「ウェンディが大人になったときに」という最終章がある。大人になることを拒み、永遠に年をとらないピーターパンと、年をとり大人になっていくウェンディの切ない結末。身勝手に無邪気であり続けることは、残酷なことでもある。
●ピーターパン
永遠に年をとらない少年ピーターパンは、影を縫い付けてくれたお礼に、ウェンディたちをネバーランドに招待する。妖精ティンカーベルの粉で空を飛び、人魚や海賊のいるネバーランドでの冒険が始まる!
●ファンタジーを読む 河合隼雄/講談社α文庫
ファンタジーは「たましいのあらわれ」だと筆者はいう。『トムは真夜中の庭で』『床下の小人たち』『ゲド戦記』など13の物語を「たましい」で読み解く。自分が死ぬ存在であることを「知っている」のは人間だけで、できれば死を避け、永遠の命を願いたいと思う。もし、本当にそうなったら世界の全体の均衡が崩れてしまうのだ。
●明恵 夢を生きる 河合隼雄/講談社α文庫
鎌倉時代の名僧 明恵上人は、生涯にわたって丹念につけられた膨大な夢の記録を残した。ユング心理学者が明恵上人の生涯と内的世界にせまる本書は、夢のとらえ方や夢と自己実現の関係など、人間が生きるうえで大切なことを説く。『ながきよの 夢をゆめぞとしる君や さめて迷える人をたすけむ』この世のことは夢のようにはかなく無常と知ったならば、その夢から覚めることだ。
●イメージの心理学 河合隼雄/青土社
人類の意識の深層に生じる神話、昔話、象徴。ユング心理学者が、夢や幻覚など個人のイメージ体験の根源にひそむものを、芸術や宗教、心理療法などからさぐる。『』
●私たち、主婦だけで、理想の「終の棲家」をつくりました! 網中裕之/PHP
神奈川県藤沢市にある「ぐるーぷ藤一番館」は、市民たちが出資して作った福祉マンションだ。老人ホームだけでなく、精神障害者のグループホームや幼稚園も同居している。全国から視察が絶えないという理想の地は、いかにして生まれたのか。
●校長先生、大好き!~アラビアのオマーン王国に学校を作った日本女性の物語~ スワード・アル ムダファーラ/求龍堂
ごく普通のOLだった女性が、文化交流の催しがきっかけで石油王国オマーンへ。資格も語学もお金もなかった著者が、理想の学校を作り上げた半生記。
●アボカド~路地で作れる熱帯果樹の栽培と利用~ 米本仁巳/農山漁村文化協会
国産アボガドの作り方と食べ方を紹介。日本で売られているものは、メキシコ産が多いのだとか。脂肪分が豊富で「森のバター」とも呼ばれる。なんと、愛媛県松山市は、アボカド生産日本一を目指しているそうだ。気温が2℃以下になると枯れてしまうアボカドの冬越しの方法など、松山の地に適した栽培の研究に取り組む農家さんたちがいる!
何年も何年も手間暇かけて、自然の恵みを手に入れて流通させようという熱意。すごいです。
●デコポン(不知火)をつくりこなす 河瀬憲次/農山漁村文化協会
甘い果肉とユニークなネーミングで人気の柑橘「デコポン」の、生育特性や栽培のポイントを紹介。栽培の課題についても、知恵と工夫で総合的な対策を示す。デコポンは登録商標で、「清美」と「ポンカン」を交配した品種「不知火」のうち、一定基準をクリアしたものが流通している。
都合で参加できなかったメンバーから届いた紹介本。
●なりたいものだらけ ジェリー・スピネッリ/ジミー・リャオ/鈴木出版
大きくなったら何になる? あれもこれもたくさんあるよ、どれにしようかな。子どもの発想が楽しい話。カバーを外すと、違う絵になっている。
●おれ、よびだしになる 中川ひろたか/石川えりこ/アリス館
僕が好きなのは、おすもうさんより「よびだしさん」! 大相撲の世界に飛び込んだ少年の成長物語。観客の中に、長野ヒデ子さんや中川ひろたかさんが描かれている。
●ハナさんのおきゃくさま 角野栄子/西川おさむ/福音館書店
ハナさんは、町と森の境目にある家に住むおばあさん。玄関が二つある家には、おかしなお客さんが出たり入ったり。空想の世界で遊べる楽しい話。
皆さん ありがとうございました。
寝ている間に見る夢も、やりたいことを描く夢も、現実生活にからめて引き受けようとしたときには、自分の生き方を反省したり努力を求められたりするもの。
夢見るユメ子さんでばかりはいられない。
『苦しみなくして真の楽しみはあり得ないのだから、これも仕方ないことである』(河合隼雄)
次回は、4月11日(土)19時~21時です。(テーマは未定)
3月14日(土)19時からの、「ケアする人のための ゆるふわ読書会」もよろしくお願いします。
⇒詳しくはコチラ
ご参加お待ちしております。