通過儀礼と再生の物語

第10回「本好きのための読書サロン」には、『旅立ち』をイメージした本が持ち寄られました。

人は、生まれてから最期を迎えるときまで『成長と発達』を続けると言われています。

参加メンバーが『旅立ち』からイメージしたのは、発達段階や人生の節目に訪れる通過儀礼と別れの物語、死と再生の物語でありました。

アンパンマンの作者・やなせたかしさんの本が出てきた瞬間「そうそう、そうだね~」全員一致の納得感がすごかったです(笑)

テーマ「旅立ち」のキーワードは、まさに「愛と勇気だけがともだちさ」なのでありました。

●「テスの木」ジェス・M・ブロウヤー/ピーター・H・レイノルズ/なかがわちひろ(訳)

テス(6歳)の大好きな木(175歳)が嵐で折れてしまい、危険だからという理由で切り倒されることに。悲しみにくれるテスが考えたのは、木のお葬式をすることでした。いつか必ず訪れる大切なものとの別れ。

 

 

●「星になった福ジロー」安川眞慈

森に住むみんなのために「幸せ」を探す旅に出る福ジロー。さまざまな生き物と出会いながらたどる「幸せ」の意味。

 

 

●「チップス先生さようなら」ジェイムズ・ヒルトン/菊池重三郎(訳)

イギリスの全寮制男子校のチップス先生。誠実な人柄とユーモアで学生たちに慕われた教師生活や妻との思い出を回想しながら亡くなるというストーリーで、2度も映画化された古典の名作。

 

 

●「さすらいのジェニー」ポール・ギャリコ/矢川澄子(訳)

ある日突然、白猫に変身してしまった少年ピーター。優しくもたくましい野良猫ジェニーに出会い、導かれながら“野良猫”として成長していく。命がけの冒険譚が繰り広げられるファンタジー。ジェニーが見せる「愛と勇気の選択」が切ない。

 

 

●「旅猫リポート」有川浩

ある事情で飼い猫ナナを手放さなければならなくなったサトルは、新しい飼い主を探す旅に出る。絵本や舞台にもなり、実写映画が今年10月公開予定。「人前で読まないほうがいいですよ」とのことです。

 

 

●「おかあさんはね」エイミー・クラウス・ローゼンタール/トム・リヒテンヘルド/高橋久美子(訳)

お母さんから子どもに贈る言葉と、やさしいタッチの絵。子育て中の方に。

 

 

●「ちいさなあなたへ」アリスン・マギー/ピーター・レイノルズ/なかがわちひろ(訳)

結婚という新たな人生の旅立ちのとき、母から娘に贈りたい本。

 

 

●「おじいちゃんのごくらくごくらく」西本鶏介/長谷川義央

ゆうたのおじいちゃんは、お風呂で「ごくらくごくらく」と言う。おじいちゃんが亡くなったあとの寂しさも、「ごくらくごくらく」という合言葉が癒していく。おじいちゃんの旅立ちは、切ないけれど温かい。

 

 

●「ルルン=ナンダーのほし」やなせたかし

空から落ちてきた星の子ルルン=ナンダーと、心やさしい少年の物語。相手を思う気持ちは、ほんとうは切ないものかもしれない。1976年に発表された名作が、2015年に復刻版として出版されました。

 

 

●「壁を破る言葉」岡本太郎

出口を探している人へ。強烈な一撃を欲している人へ。壁を突き破るほどの熱量が必要なひとへ。

 

 

●「どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた」吉田尚記/石川善樹

ニッポン放送アナウンサーと予防医学研究者による「幸せに生きる方法」。対話形式なので読みやすい。

 

●「旅立ちの記」片倉ともこ

2005年、女性で初めて国際日本文化研究センター所長となった著者は、2011年に末期がんと宣告される。2013年2月に亡くなるまで綴られた、「ややこしいけれど ゆたかな女の人生」の旅立ちの記。「泣いて生まれ 微笑んで逝く 花のした」

 

 

●「犠牲-わが息子・脳死の11日間」柳田邦男

ノンフィクション作家である著者が、25歳の息子を自死で亡くすという体験を記した本。冷徹な作家の目と、父親としての葛藤。存在の価値を求め続けた息子のために臓器提供を決意するプロセスには、脳死と臓器移植、医療者と患者家族についての示唆が。

 

 

●「いろいろなむし」まつばらいわき

セミはどうして飛ぶ時にオシッコをするのか?甲虫やセミ、バッタの不思議を詳細なイラストで解説。虫の世界にも、実にさまざま不思議な「旅立ち」がありますね。

 

 

●「君たちはどう生きるか」吉野源三郎

1937年に出版された教養教育の古典。2017年に漫画化されて話題になっている。主人公・コペル君の悩みに叔父さんがアドバイスするのだが、親や教師ではなく「叔父さん」であることがポイントと言われ、漫画版を購入しているのはオトナが多いとか。

 

 

●「いつだってともだち」モニカ・バイツェ/エリック・バトゥー/那須田淳

大好きな友だちが引っ越してしまって元気をなくした子ゾウのベノ。森のフクロウに教えてもらった3つの方法を試してみると…。大切な人との別れは必ずやってくる。大人も読みたい絵本。

 

 

●「明日の神話~岡本太郎の魂」明日の神話・再生プロジェクト(編)

「太陽の塔」と同時期に制作され行方がわからなくなっていた巨大壁画「明日の神話」が発見されたのは2003年。壁画が修復され再生されるまでの960日間の記録。再生に携わった人たちが受け取った岡本太郎の魂のメッセージとは。

 

●「夜明けの図書館」埜納タオ

市立図書館で働く新米司書が主人公のマンガ。利用者からの様々な質問(難問?)に答えていくお話。図書館を訪れる人たちとの出会いが、やさしいタッチで描かれている。

 

 

●「図書及び図書館史」司書過程科目のテキストで、図書の形態、印刷、普及、流通、図書館の歴史等を解説。伊予市で建設中の新図書館は、果たしてどのような歴史を刻むのだろう。地域の人たちと共に本の旅をする図書館でありますように。

 

 

●「はじめてのおつかい」筒井頼子/林明子

1977年発行のロングセラー絵本。初めてのおつかいは、どきどき緊張の連続。こんな町の「おつかい」の風景は、もしかしたら過去のものになるのかもしれないけれど、子どもにとっての「はじめて」を大切にする世の中であり続けてほしい。

 

 

●「指輪物語」J.R.Rトールキン/瀬田卓二・田中明子(訳)

映画「ロード・オブ・ザ・リング」の原作(初出版は1954年)であり、現代のファンタジーに多大なる影響を与え続けている作品。冥王サウロンから世界を守るために、一つの指輪を葬る旅に出るホビット族・フロドと仲間たち。旅の要所要所で設定される「旅立ち」の選択は、誰かのために決意する勇気ある一歩。物語の終わり、最後の旅立ちは、もはや苦しみのない世界への旅。

 

ご参加の皆さん ありがとうございました。

次回は、6月9日(土)19時~です。

テーマは、また改めて♪