松山市総合福祉センターで開催された「介護技術研修会」には、松山市内の「地域密着型介護事業所」で働く方たちが参加されました。
「人にやさしい介助・入門編」として、ふだん自分が行っている介助法で【介助される体験】をたくさん取り入れた内容にしました。体の感覚、体験を通して気づきを築いてもらいたいからです。
驚くことにというか、予想通りというか、皆さんは【介助される体験】をしたことがないのでした。
【介助される体験】をするということ自体に、「え~?」とびっくりしておられました。
それは、現場にいた私には、とてもとても共感できることなのでした。
日々あたりまえにやっていることを、ひっくり返す部分もあります。
最初のほうは、とても混乱しているのが伝わってきました。
体験をくり返しているうちに、少しずつアタマと体が開いていくのが伝わってきました。
両脇の下に手を入れられて「よいしょ」と持ち上げられたら、「痛い」です。
いわゆる全介助(自分では何もしてはいけません)で水を飲むと、「不自由」を感じます。
腕を持たれて歩くと、歩きにくいのです。
小さくまとめられてゴロンとされる「寝返り介助」と、
寝返りするときの自然な動きを助ける介助と。
【介助される体験】を通して、その違いを実感してもらいました。
目と、手と、声を使って、一緒に動く。
安全(事故防止)や効率(時間短縮)を理由にして、介助のあるべき姿を見失っていませんか?
●寝かせきりにしない(時間がない? 人がいない?)
●もの扱いしない(コンパクトにしてゴロリゴロリ)
●介助で傷つけない(もの扱い→打撲、皮膚損傷)
●できることを奪わない(安全に早く、公平に、できないレッテル貼り)
人にやさしい介助は、人の自然な動きが基本です。
相手の動きを引き出し一緒に動きます。
人力パワーに頼ることで介助者の健康を損なったりしません。
人にやさしくない介助が傷つけるのは、体だけではありません。
「私は自分で動いてはいけない人だ」
「私は自分で動けない人だ」
「少しくらい痛かったり怖かったりしても、我慢しなければならないのだ」
よかれと思ってやっていることが、尊厳を傷つけている可能性があります。
かかわっている利用者さんのことで質問もありました。
「良い姿勢」にさせてくれないとき、どうしたらよいですか?
認知症の人にも、意思や感情があります。
こちらが「その姿勢は悪いから」「あなたのために」良い姿勢になおそうとする。
けれど、そのことが本人にとって「嫌なこと」なのであれば、「良い姿勢」になおすことにどんな意味があるのでしょう。
よけいなお世話でしかないのかもしれません。
本人にとって「嫌なこと」はなんなのか、という視点が必要です。
起きて活動している時間帯なら、ずっと「良い姿勢」で座っていなければならないのでしょうか。
家でテレビを観ているとき、私たちはどんな姿勢でいるでしょうか。
「良い姿勢」かどうか、が問題の中心ではないのでは?
私からは、「初対面の人の体に触れる・触れられるという体験はどうだったでしょうか?」という問いかけをしました。
認知症の人の体に触れる介助をするとき、今日の経験を思い出してください。
排泄や入浴など裸に触れる介助をするとき、無頓着になっていないか振り返ってください。
いただいた感想の一部を紹介します。
●とてもわかりやすく実践できる
●目からウロコだった
●わかっていてもやっていなかったことがある
●介助者も無理をしないことが大切
●介助者にやさしい=本人にもやさしい
●圧抜きや摩擦軽減グローブのことは知らなかったので勉強になった
●さっそくやってみます
●声かけしているつもりになっていた
●もっと勉強したい
入門編で得たことを、どうぞ一つでも現場で実践してみてください。
急に全てを変えることはできませんが、
自分の動きを意識することで、相手の動きも意識することができます。
自分の目と手を通して、相手を感じてください。
反応がないと思われている人にも、丁寧に言葉を使ってください。
企画や物品準備にご理解をくださった松山市社会福祉協議会の皆さま、ありがとうございました。
「もしあれば・・・」とベッドを要望してみたところ、なんと手動のベッドが出てきました!
懐かしく楽しくグルグルしました(笑)
今は本当に良い福祉用具がたくさありますので、介護現場にもどんどん導入していただきたいと思います。
摩擦軽減グローブで圧抜きのデモンストレーションをしたところ、
モデル役の方が「おお~っ」という素晴らしいリアクションをしてくださいました。
ベッドアップされて窮屈だった表情が、いっぺんに笑顔になりました。
百聞は一見にしかずですね。感謝。