人の自然な動きを基本に、お互いが心地よい介助を学ぶ学習会を開催しました。
今回は、現場で経験している葛藤を少しでも解消することを目標にしました。
写真は、車イス上で姿勢を直すときの、『あるある場面』を再現しているところです。
「よいしょ!」で一気に上げています。
「早く効率よく」は、介助者の都合です。
相手を小さくまとめて自然な動きを封じ込め、一塊のモノ扱いしている一方通行の介助です。
「私は自分では動けない人だ」
「動いてはいけない人だ」
「少しくらい痛くても怖くても、私は我慢しなくてはいけない人だ」
そんなメッセージをくり返し受け取るうちに、お年よりの心も体も縮こまり、閉じこもっていくでしょう。
「イチニのサン!」という声かけは、お年寄りの協力を引き出し(気合いをいれる?)、一緒になってやってもらえる(従ってもらう?)、それが残存能力を活かす自立支援になる、なんていう説明を聞いたことがありますが、とんでもない発想ですね(^^;)
「すわりなおしますね」と言葉で伝え、
一緒に動いてもらいたい足なり背中なりをやさしくなでて、
その動きの方向を示してから始める。
この数秒を、お年寄りと一緒に動く準備のために使いましょう。
その数秒を、小さくまとめて互いの緊張を高めるために使っていませんか?
「安全に」は、実は見せかけです。
力任せに持ち上げたり引っ張ったりするので、介助者の腰痛の原因となります。
また、介助者の筋緊張が相手に伝わることで、お年寄りの筋緊張を高め、関節の拘縮を強めます。
相手の皮膚や関節を傷める可能性もあります。
「早く」できれば、相手の気持ちはどうでもいいのか?
「転倒」さえなければ、何をやってもいいのか?
まずは、人の自然な動きで「座りなおす」とはどういうことなのかを確認します。
そして、それぞれのお年よりからその動きを引き出すためにどうするかを考えます。
今回の学習会ではやっていませんが、適切な福祉用具を正しく使うという方法もあります。
足の力が弱い人のズボンの上げ下ろしをどうするか。
イスに座った状態から、お尻を浮かした状態になってもらうということについてもやりました。
言葉で伝えたとおりに動いてもらうことが難しい場合や、
自分より体格がいい人の場合など、
試行錯誤しながら考えました。
では、実際の現場で何ができるのか・・・。
時間をかけて変えていかなければならないので気が遠くなりそうです・・・。
でも、自分一人でも明日からできることはないか探っていきました。
お年寄りに伝えること、一緒に動くことを諦めない。
人にやさしく、お互いが心地よく。
こうやって、仲間と一緒に考えられる時間が励みになります。
皆さまの感想の一部を紹介します。
・今日参加して介助される人になってみて、自分の動きを尊重されると気持ちいいんだなあと、改めて実感しました。「これから立ちますね」と、やさしく背中をなでながら動く方向を伝えると、それまで頑として動こうとしなかった認知症のお年よりも本当に動いてくれます。この『魔法の手』の実践を続けていく意味はあります。
・時間で動く現場に疑問を抱きつつも慣れてしまいそうで、参加しました。自然な動きとか、自分の体の中の感覚とか、忘れかけていました。もう一度、自分の動きを見直して、できることをやっていきます!
・声のかけかた、からだの触りかたひとつで、相手の緊張がゆるみます。自分の緊張が相手に伝わっているのがよくわかりました。現場でどれくらいできるか不安ですが、知ることができてよかったです。
・ここでやったことをそのまま実際のお年寄りにはできなかったけれど、知識があって練習もしているので、自分なりに応用をきかした介助ができていると思う。これからも学び続けたい。
・初めて参加した。「手」とか「足」とかではなく、「骨」とか「筋肉」という考え方なのがとても印象に残った。なるほどな、ということがたくさんあったので、これからも続けたい。
・実際の現場では試行錯誤の連続。いっぺんに変えるのではなく、少しずつやり続けたい。
・介助者も介助されるお年よりも、パワーに頼る方法が習慣、そこを変えるのは本当に難しい。「ああ、なるほどね」という成功体験を積み重ねられるように努力を続けます。
ご参加の皆さま ありがとうございました。
いつも丁寧に楽しく指導してくれる中居真紀さん(キネステティクス®認定教師)ありがとう。
次回は、6月18日(日)10時~12時です。
初めての方も歓迎です。
ご参加お待ちしています。