1月28日(土)松山市内で開催された講演会「オーストラリアの介護~利用者も職員もハッピーな介護システム~」に行ってきました。
講師の國分春美さんは、オーストラリアのナーシングホームで8年間働いた経験を活かして活動されています。
⇒詳しくは日豪ヘルスケアワーカーズ協会
介護士が働く環境について、法制度から現場のシステム、給与体系まで具体的な情報満載でした。
子が親の介護をしたり親の財産・年金をあてにしたりする文化ではないので、
ひとりで暮らすことが危うくなった時点で施設入所、というラインが普通だということ。
介護に関する相談窓口は、「MY AGED CARE」という機関に一本化されています。
必要な介護によって、在宅、ショートステイ(1ヶ月~2ヶ月単位)、ローケア(日本ならケアハウスクラス)、ハイケア(特養クラス)というシンプルさ。
老人ホームは、日本でいうところの老健(ナース24時間常駐)+有料老人ホーム(入居一時金)+特養(最後まで)のようなイメージだとか。
私が興味津々だったのは、明確な分業制と、合理的な雇用形態とシフト制でした。
○分業制
老人ホームは、管理者→看護師→介護士という階層になっていて、その周囲に多彩な専門職が配置されており、完全な分業制なのでした。
介護士は、ケアラ-とかナースエイドと呼ばれていて、利用者の<介護>しかしない。
レクレーションは「ダイバーナショナルセラピスト」という専門職が担います。
調理、洗濯、掃除、爪ケアもすべて専属の人が行います。
<記録>もしない。
とにかく、利用者のそばにいるというわけです。
介護士として働くための資格を取得して入職すると、それはイコール即戦力だという明快さ。
法律で「持ち上げない介護」が義務付けられているので、資格取得時(入職前)にはノーリフトケアのトレーニングを修了しているのです。
その後も、年に一度の研修受講が義務付けられています。
日本のような介護職資格の階層はなく、キャリアアップするなら看護師の資格を取得するしかありませんが、資格取得のための勉強時間がとれるシステムが用意されています。
○雇用形態とシフト
移民の受け入れ体制が確立され、多数の外国人介護士が働いています。
また訴訟社会ということもあり、完璧なマニュアルでケアが統一されており、責任の所在が明確です。
日本のように、人によってやり方が違ったり、教えることが違ったり、グレーゾーンが生まれたりということがありません。
マニュアルや指示通りにやらなかったことで事故が起きた場合、それは個人の責任になるというあたりも非常に合理的です。
だからこそ、そのようなことが起きないように、職員教育やリスクマネジメントが徹底しているのです。
どこに、お金と時間をかけるか。
それは、何のためか誰のためか。
利用者と職員のため!
雇用形態は、正社員、パートタイム、カジュアル、派遣の4種。
正社員とパート(短時間勤務)は2週間の固定シフトが組まれており、その繰り返しということなので、日本のように毎月シフトが違うとか、ギリギリまで来月の予定がわからないとかはなさそうです。
カジュアルは、正社員やパートタイムの有給休暇取得時に働き、固定シフトには入らない。
派遣は、一日3時間からOKで、急な病欠があったときなどの穴埋めをしてくれる。
当日の依頼でも来てくれるので、誰かが急に休んで他のスタッフの負担が増えるということがない。
すべて時給制ですが、固定シフトに入らないカジュアルや派遣のほうが時給が高い。
日本だと、すべて「正社員」が穴埋めしていくことになっています!
一日でみると、人手の必要な食事時間やシャワータイムに職員配置を増やすシフトになっています。
日本にも、いろんな働き方をしたい人がいるのです。
働き方の選択肢が増やせたら、働ける人はたくさんいるはずです。
介護に限らず、多様な働き方を認める意識改革とシステム構築が必要ですね。
かつて特養で働いていたときの、わけのわからない居心地の悪さや理不尽な感じや絶望感を思い起こしていました。
「やる気」や「責任感」や「誠実さ」を吸い取られていくような、あの不思議な世界。
システムは合理的に、責任の所在は明確に。