事故報告書の行方

出前講座で、とても良い質問をいただいたので紹介します。利用者が転倒するなどの事故が発生したとき、「事故報告書」なるものを書いて再発防止にとりくんでいるのですが、その「報告書」を書くのは誰ですか?という質問です。

その事故の当事者が書くわけですが、介護現場の事故の場合、「当事者って誰?」という疑問があるというわけなのです。いい質問をありがとう。

 ↑ ↑ ↑ お久しぶりなさっちゃんの写真。オトナなたたずまいです(^^)

 

どういうことかといいますと・・・たとえば、こんな状況が考えられます。

 

利用者Aさんを車イスからトイレ便座に移乗させたスタッフBさんは、Aさんの部屋を出ました。

(終わったらコールボタンを押してスタッフを呼んでもらうという手順になっているから)

スタッフBさんは、その間ちょっと離れて別の業務をしています。

たまたま別の用事でAさんの部屋に入ったスタッフCさんが、便座から崩れ落ちているAさんを発見!

 

つまり、事故発生にいたるまでにかかわったスタッフと、

たまたま事故現場を発見したスタッフが別人という状況。

実は、こういう状況って多いのです。

スタッフが見ていないところで起きることが多いわけですから。

そして、通常、第一発見者が書くという決まりになっています。

 

※スタッフが直接かかわっているときに発生した事故は、

基本的な安全対策や個別のリスク予測など、

やるべきことをやっていなかった可能性が大きいです。

あるいは、スタッフの技術の不足も考えられます。

 

なので、「誰が書くものですか?」という質問をしてくれた人が言いたいのは、

「私が原因を作ったわけじゃないのに、私が書かなければならないのはおかしいのでは?」

「たまたま居合わせたばかりに、私の名前で書類が残るのは納得できない」ということです。

 

そんなふうに感じていると、報告書を書くことは<役にたたないストレス>でしかありません。

しかも、なぜだか、同じ人がたて続けに書くことになるなんていうことも、よくあることなのですよね。

ツイテナイと嘆くか、他のスタッフに不満を抱くようになるか・・・。

 

質問をいただいて、その場で話し合ったことは次のようなことです。

●人が「食べて出して動いている」生活の場では、リスクを完全にゼロにはできないこと

●防ぐべき事故だったか、防げない事故だったか、みきわめること

●事故報告書は、「犯人探し」や「反省」のために作成するものではないこと

●発見時だけでなく、そこにいたるまでの直近の状況も詳しく記載すること

●その当時、デイサービスなりユニットなりにいたスタッフ全員が当事者という意識をもつこと

(×私は入浴係だから関係ない)

●事故の経験を、今後さらに良いケアをしていくために活かすととらえて、報告書を書くこと

 

「ひとりの責任にしない、ってことですね」

「良いケアをするため、って考えればいいんですね」

すっきりした表情で言ってくれて、ほっとしました。

 

事業所のリスク管理の姿勢いかんで、現場のスタッフの気持ちのありかたが変わります。

なぜ、なんのためにやるのか、明確に進む方向を示してくれるリーダーが必要です。