岩波新書『なつかしい時間』は、詩人:長田弘さんがNHK「視点・論点」で話された原稿をまとめたものです。そのなかの「猫と暮らす」から。
『その猫の習慣が、その猫の個性です』
『それぞれの生き方をつくりだすものはそれぞれの身に付いた習慣であり、習慣とよばれるそれぞれの日々の在り方であり、それぞれの自分の人生の時間の使い方である』
← 目を細めて一休み。 うまいにゃ~ かな?
習慣とは、『それぞれの生き方』であり、『人生の時間の使い方』であり、個性であるということ。
介護でよく言う“その人らしさ”とは、その人の身に付けた、その人固有の習慣であり『生き方』です。
ある施設で出前講座をしたとき。
「対応の難しい人がいて、スタッフのストレスがマックス状態なのです」という相談がありました。
話を聞いてみると、スタッフの言うことにことごとく抗っている様子でした。
その余波として、他の利用者からも「文句」を言われて・・・そんな状況のようでした。
その人のためを思ってという「わたしたちの思い」は、「わたしたち」にとっては“正しいこと”でしょう。
しかし、その人からすれば、それは「わたしたちの思い」の一方的な押し付けでしかないのです。
スタッフの皆さんとやりとりしながら、
こうなってほしい・こうあってほしいという「わたしたちの思い」と、
その人の習慣(=『その人らしさ』)のギャップについて考えてもらいました。
実は「わたしたちの思い」のなかには、要介護者はこうあるべき、という押しつけが隠れているのです。
何かのきっかけで“介護が必要な人”とされたその人は、
それまでの『自分の人生の時間の使い方』の変更を余儀なくされました。
その変更に悪戦苦闘している人を支えるのが「わたしたち」のはずです。
「あなたは介護が必要なのだから従うのがあたりまえ」というところから見ていませんか?
「わたしたち」は、どんな“まなざし”をその人に向けていますか?
“その人らしさ”について、改めて考えてくれたようでした。
皆さんの表情が少しずつ明るく変わっていくのがわかりました。
「利用者を変えようとしていた。変わるのは自分たちだとわかった。」
こんな嬉しい感想をいただきました。 ありがとう(^.^)
『自分の時間を生きる存在、それも、本然的に、
自分は自分の時間をよく生きようとする存在な
んだということを思いさだめることができなくて
はと、習慣のちからによってすべてを語る哲学
者である猫は、ごくあたりまえのように日々に
示しているように思えます。』
『見て感じて聴きいって考える。そうした心のはた
らきのみなもとたるべき、日々の習慣のちから』
「なつかしい時間」長田弘著(岩波新書)より
← 今日も好き日である、まんぞくだにゃ~