「“ニンチ”があるから」
ある人が、自分の親についてこう言いました。
多少ながらお付き合いのある人の口から聞くと、
さすがにちょっとショックでした。
介護関係の方ではありません。
“ニンチ”という言葉を、ごく当たり前に自然に使って
おられたので、ちょっとザワザワしました。
いったい誰が、この言い方を広めたのかしら。
テレビでは「認知症キャンペーン」などの言い方もされていて、実はこれもちょっとザワザワします。
「認知症」の疑いがある人のことを、
“ニンチがある”“ニンチが入っている”と言うようになったのは、いったいいつ頃なのか。
「介護業界」に関わり始めころ、
ケアマネージャーさんが使うのをよく聞きました。
いつの間にか、家族も使うコトバになりました。
“ぼけ”を“認知症”と言い換えた効果でしょうか。
「ぼけた」より“ニンチが”のほうが言いやすくて
気兼ねなくオープンに話せるようになったなら
それはそれで良しとしましょう。
ややこしい専門用語を省略したコトバを作って、共通の符号として用いることはよくあることでしょう。
でも、どうしても気になってしかたがないのです。
認知症を患った人のことを“ニンチが入っている”なんて、専門職が家族の前で言ってていいのか・・・?
介護が「サービス」であるなら、「お客様」のことを「お客様」に向かって符号で呼んだりしてていいのか・・・?
わかりやすく伝えるのと、省略して伝えるのとは違う。
“ニンチ”があるから無理・・・
“ニンチ”がひどいから手がかかる・・・
“ニンチ”という符号は、ネガティブなイメージで用いられている気がしてならないのです。
専門職として報酬をもらっているのだから、少なくとも当事者の前では使わないようにしてほしいものです。