テレビやラジオから頻繁に聞こえてくる耳障りな「敬語」。
いちいち反応していたら疲れるので聞き流すように努めていましたが、
先日 それにしてもあんまりな 「させていただく」 を聞いてしまいました。
愛媛県の某市議会議員が銃刀法違反容疑で書類送検されたというニュース。
本人がインタビューに応じている中で使ったのが 「反省させていただく」 でした。
「反省させていただく」 に本人が込めた意味は不明ですが、
「謝罪させていただきます」 も 最近よく聞くような気がします。
「反省」「謝罪」とは 「させていただく」ものなのでしょうか。
そこのところを光文社新書「失礼な敬語」(野口恵子著)が解説してくれていますので、
一部引用しつつ要約してみます。
※『』内が引用です。
「させていただく」には 二つの相反する用い方があります。
一つは、
『厚かましくて申し訳ないと思いつつ、私は~する。ありがたいことに、それをあなたが許可してくれたから』
こんな気持ちで用いる控えめな態度 → Ⓐ
もう一つは、
『相手の意向など全く考慮せずに、私は~する と一方的に宣言するもの』
言葉づかいは丁寧だが態度は大きい → Ⓑ
また 「させていただく」 の成り立ちは、
動詞「する」の使役形「させる」 + 「~てもらう」の謙譲語「~ていただく」 です。
使役形の「させる」には、
「相手に何かを強いる」場合と 「相手のしたがっていることを認める」という場合があります。
「させていただく」で問題になるのは「認める」ほうの「させる」です。
例えば 『娘を海外旅行に行かせる』
『甘いものを食べさせない』
なので・・・「させていただく」を用いるときには、
「させる=許可を出す」誰か と 「することを許してもらう」誰か(私) がいることになります。
本の中で例示されているのは、
体調が良くないので早退したい と上司に許可を求める部下の場合。
『頭痛がひどいので、申し訳ありませんが、今日は早退させていただけますでしょうか』 → Ⓐ
こんな会社やめてやる!の気持ちを込めて一方的に自己主張する場合。
『会社をやめさせていただきます』 → Ⓑ
おかしな用い方の例としては、
『このたび入籍させていただくことになりました』
→ このたび入籍することとなりました
『この春 A大学を卒業させていただきました』
→ この春 A大学を卒業いたしました
『少額ですが (寄付金を)送金させていただきました』
→ 少額ですが送金いたしました
へりくだってor丁寧に・・・のつもりが かえって慇懃無礼になりかねない例です。
取扱い注意の「させていただく」を使わないで 別の表現を工夫することを筆者は勧めています。
敬意をこめる相手は誰なのか 何をする許可を求めているのか、
「させていただく」を使う時には くれぐれもご用心ください。