ある女性が介護の資格をとるため実習に行ったとき、
その実習先のお年寄りたちの姿に涙が出てしまって、
「この仕事はできない」 と思ったそうです。
尊厳を守られているとはいいがたい状況がショックだったのです。
その話を聞きながら 私も思い出したことがあります。
患者さんのほとんどが高齢者 という所でのことです。
看護師や介護職が食事介助をするのですが、
食後の内服薬を 主食の粥にふりかけて混ぜ込んでいました。
初めて見たときは 「へえっ。うまいこと考えたなあ。」 と私も思いました。
でも そうやって『食事介助』と『服薬介助』を効率よく受けられる所に、
自分の親を託そうとは思わなくなりました。
のちに 別の所で「管理職」になったときには、
そのような『介助』をしないように しなくてすむように 意識改革・ケア改革に努めました。
実際にやっている人たちの意識は、
「そのように教わったから」「他の人がやっていたから」 くらいのものなのです。
さて 涙が出てしまった女性はどうしたのでしょうか。
お年寄りとのかかわりに喜びを感じている若い職員の姿に感銘を受け、
自分もやってみようと思ったそうです。
自分よりもずっと若い その職員の純粋な態度に励まされたのでしょう。
知らず知らず彼女の背中を押してくれた若者が、
今も喜びとともに介護の仕事を続けていることを願ってやみません。